見極めは、gtdの五つのステップの2つ目で、インボックスに集めたものを一つひとつ、どのように行動に移していくのかなどを見極めていく過程です。
見極めによって、「気になること」から、本当の「目的」や「行動」を見出すことは、gtdの中核ともいえる重要な作業です。
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gtdでの見極めの重要性と意義
見極めは、インボックスを空にするステップです。
「把握する」のステップで、インボックスに集めた「気になること」の一つひとつについて、それがどういう性格のものか、どんな行動がそれに対して必要かを判断していきます。
「空にする」といっても、「気になること」すべてに、必要な行動をとる、ということではありません。
行動を見極めたら、「整理する」のステップで、その行動を後で思い出せるよう、リマインダーを設定します。
それらを実際の行動に移すのは、4つめのステップ「実行」でのことです。
gtdにおいて、「見極め」のステップは、非常に大切な過程です。
先ほども書いたように、ある意味で、gtdの中核といっても良いくらいです。
それは、見極めをすることで、「気になること」から、第一印象で見えてくるのとは異なる、「本当に必要な行動」や「本来の目的」などが見えてくることが多くあるからです。
gtdの見極めにおける二つの大切な視点
見極めをするときに、大切なのが、その「気になること」に関する、「あるべき姿は何か」と「そのあるべき姿に近づくための具体的な行動は何か」という二つの視点です。
タスク管理のうえで、「目的」と「行動」を考えるのは当たり前のようですが、意外に多くの人が、この二つをしっかり考えないまま、気になることを並べただけのtodoリストなどを作ってしまいがちです。
あなたがもし、todoリストを作っているなら、そこに「新規事業の予算書をつくる」「家の物置を片付ける」「体を鍛える」といった、一見、タスクのように見えて、実際にとるべき行動を表していない(場合が多い)項目が並んでいないでしょうか?。
そうした項目の多くが、リストに並んだまま、ずっと先送りされていることも多いでしょう。
「タスクの先送り」を防ぐために、行動を明示する
例えば「新規事業の予算書をつくる」だったら、実際にもうすべての関連資料やデータがそろっていて、あとは下書きに取り掛かるだけ、という段階なら、これでよいでしょう。
しかし実際は、予算書をつくる前提として、関連の部署に重要なデータを問い合わせたり、前年度の類似の事業の実績データを読み返したり、という作業が必要なことも多いでしょう。
「家の物置を片付ける」も、必要な道具や準備が整っていて、あとは休日に取り掛かるだけ、という段階だったら、この項目が実際の行動を表しています。
実際は、「棚を作らないといけないから、物置の寸法を測っておかないと」だったり、「物置に入っている壊れた洗濯機を粗大ごみに出さないと片付けが始まらないから、粗大ごみの申し込みをしないと」という、本来の必要な行動が隠れている場合がほとんどです。
目的と行動をしっかり見極めていれば、リストに並ぶのは「〇〇のデータを、企画部に問い合わせる」だったり、「物置の寸法を測って手帳にメモしておく」だったり、となります。
こうした具体的な行動を明示することで、先送りすることなく、その行動の実行に取り組みやすくなります。
アレンの著書から学ぶ見極めの重要性
アレンの「はじめてのgtd」338ページに、この点で、とても印象的なエピソードが載っています。
アレンがクライアントと気になることリストを見ていたときに「タイヤ」という項目があった時の話です。
「私が『これは何ですか』と尋ねると、クライアントは「車のタイヤを替えないといけないのです」と答える。次に私は、『具体的に、次にやる行動は何でしょう?』と聞く。すると、クライアントは眉間にしわを寄せて考えはじめ、ほどなくこんな結論を述べる。『インターネットで調べて値段を確認しておくことですね』。
タイヤのことは、しばらく前から気になっていた可能性が高い。別の用事でパソコンを使うついでに値段を確認する機会も無数にあったはすだ。なぜそれをやらなかったのか。パソコンの前にいるときに、タイヤを替えるのにパソコンが必要だと思い浮かばなかったからである。
……だからこそ、あらかじめ行動の選択肢を考えておくべきだったのだ。次に取るべき行動をすべてリストにしてあれば、会議まであと15分あって、なおかつコンピュータが目の前にあり、エネルギーが10点満点で4点のときに、行動のリストに『タイヤのことを調べる』という項目を見つけることができたはずだ。『これならやってしまえる』とインターネットでさっと調べたあとに、使える時間とエネルギーを有効活用できたという満足感に浸れたに違いない。……こうして彼は後日タイヤを交換し、気分よく車を運転できたはずだ」
行動の選択肢をきちんと考えておけば、すぐに取り掛かれるはずの作業も、考えておかないと先送りされるだけになってしまうことを表す、印象的なエピソードです。
あなたのtodoリストにも、このクライアントの「タイヤ」のような項目が並んでいないでしょうか。
仕事を先送りして、締め切り近くになってようやく取り組みがちな人は、タスクを具体的な行動に落とし込んでいないのが一つの理由かもしれません。
「気になること」に関する、「あるべき姿は何か」と「そのあるべき姿に近づくための具体的な行動は何か」、この二つの視点で、しっかりと見極めをすることが、大切です。
見極めのプロセスと実際の流れ
インボックスのなかから、「気になること」を一つひとつ順番に取り出し、それの「あるべき姿」と「取るべき行動」を考えていきます。
物理的な備品なら、必要なものなのか、修理などが必要なのか、どこに置いておくべきものなのか、などを考えることになるでしょう。
書類やメールなら、内容に目を通し、内容にかかわって自分が取るべき行動が生まれるのか、保管しておく必要があるのか、目を通しておけばもう廃棄して良いのか、などを考えます。
頭の中の「気になること」をnozbeのインボックスなどに書き出したものなら、「その項目に関しての、あるべき姿」や「行動を取る必要があるか」「取るならどんな行動か」を考えることになります。
見極めの結果、「行動の必要はない」と判断するものも多く発生します。
資料やゴミ、将来に保留しておくもの、などです。
ゴミは廃棄すればよいし、資料はしかるべき場所に保管しておきます。
将来に保留しておくもの、については、整理のステップで説明する「いつかやるリスト」や、「備忘録ファイル」などで管理します。
行動が必要と判断したもののうち、2分以内で実行できるものは自分でその場でやってしまいます(2分ルール)。
2分以上かかるものは、自分でやるのがよいか、他人に任せるのがよいか、を考え、それに応じて、整理のステップで必要なリマインダーを設定します。
見極めで明らかになったプロジェクトの管理の方法は
また、見極めによって考えた「あるべき姿」は整理のステップで、プロジェクトとしてプロジェクトリストに書き込みます。
gtdではプロジェクトを「達成するのに1つ以上のステップが必要なもので、なおかつ1年以内に達成できる事柄」(初めてのgtd、198ページ)と定義しています。
先ほど上げた、todoリストの例でいえば、「予算書をつくる」は、gtdではタスクではなく、「データを集める」「関係部署と打ち合わせをする」「下書きをする」などの複数の行動を経て達成される「プロジェクト」になります。
「物置を片付ける」も同様です。
見極めによって「気になること」から見出した「あるべき姿」が、プロジェクトとなるのです。
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見極めを通じて明らかになる本当のプロジェクトや行動
繰り返し書いてきたように、見極めが、gtdのステップで非常に重要なのは、「気になること」から一見して思うのとはまったく別の「プロジェクト」や「次の行動」が見えてくる場合がよくあるからです。
先ほど引用した、アレンの本の「タイヤ」の例も、「気になること」の背後に隠れて見えにくくなっていた「次の行動」の例でしょう。
例えば、インボックスに入っているのが、「返信が必要なメール」だったとします。
一見すると、あるべき姿は「メールを返信した状態」、行動が「返信メールを書くこと」です。
しかし、見極めをすると、どうでしょうか。
それが取引先からの、相談中の契約に関する問い合わせのメールなら、あるべき姿=プロジェクトは「A社からの契約を取ること」になります。
返信メールを書くには、技術部門から契約にかかわるデータを取り寄せる必要がある、というなら、具体的な行動は「技術部門に問い合わせる」になります。
組織が抱える大きなテーマや課題が見えてくることも
「あるべき姿」を見極めることで、大きなテーマや課題が見えてくることもよくあります。
あなたの頭の中の気になることを書き出したインボックスに、「次の企画会議用の資料」という項目があったとします。
次の行動から考えれば、「資料の案を書くこと」、あるいは、そのためのデータを集めること、が取るべき行動になるでしょう。
しかし、その前に「あるべき姿」を考える必要があります(あなたが、組織や部署のリーダーの役割にいるなら、特にそうでしょう)。
その企画会議で出さなくてはいけない結論は何か、何のために開くのか、そもそもその企画会議は必要なのか、、、、。
見極めた「あるべき姿」によって、次の行動は大きく変わります。
「部下からの悩みの相談」が気になることであれば、「あるべき姿」はその部下個人の悩みを解決することでしょうか?。
そうである場合もあれば、その部下の悩みから「部署に新しい人材を補充すること」や「新しい管理システムを導入すること」といった、より大きな「あるべき姿」が見えてくることもあります。
仕事を効率化し、生産性を上げるには、目の前の「気になること」を次々とこなしていくだけでは、十分ではありません。
その「気になること」の背後に、どんな「あるべき姿」があるかという、より根本的な問いが必要になる場合も多くあるのです。
gtdの見極めを成功させるためのコツは?
「初めてのgtd」では、見極めをする際の三つの原則を書いています(179ページ)。
・一番上のものから見極めていく
・一度に一件ずつやる
・インボックスに戻さない
インボックスを処理していると、ついつい下の方に埋まっている「より重要そうなもの」や「簡単に見極められそうなもの」に手を伸ばしがちです。
できるだけ早くインボックスを空にするために、「すべてを平等に」上から順に見極めていくのがおすすめです。
やりたいものからやっていくと、「気が重いもの」だけがインボックスに残っていき、それらをインボックスに残したまま、まとめて先送りということになりがちです。
一度、インボックスから取り出したものを戻さないのも、同じ理由です。
「見極めが難しいな」とインボックスに戻してしまうと、それらはずっとインボックスに残ったままになりがちです。
考えるのは「あるべき姿」と「行動」だけで、実際に行動を取るわけではないので、上から順にあまり時間をかけず、どんどん見極めていくのがコツです。
nozbeを使った見極めの方法とそのメリット
gtdのタスク管理アプリnozbeの場合は、見極めの作業は、整理のステップとほぼ一体で行います。
日常から、頭のなかに「気になること」が生まれたら、すぐにnozbeのインボックスに入れておきます。
見極めのステップでは、nozbeのインボックスを開き、上から順に見極めをしていきます。
「気になること」として書かれている、項目それぞれについて、「あるべき姿」を考えます。
例えば、「A社からのメール」なら、「A社からの契約を取ること」が目的です。
あるべき姿は、プロジェクトとして、登録します。
あるいは、すでにあるプロジェクトに関連するものなら、そのプロジェクトを設定します。
具体的な行動を考え、それが分かるものに、タスクの名前を書き替えます。
技術部門に、A社との契約にかかわるデータを問い合わせるなら、「技術部門へのデータの問い合わせ」に書き換えます。
具体的に、どのように問い合わせるか(メールか、電話か、といった)なども決めることが必要ですが、それは次の「整理」のステップで説明します。
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gtdの見極めがもたらす効果。行動力を高め、効率性を上げる
見極めを行うことで、「気になること」の背後にある本当の目的や、本来必要な行動がわかることが、見極めの最大の効果です。
それは、「頭脳労働」と「実行」を分ける、ということにもつながります。
見極めの段階で、しっかり「気になること」について考え、目的や行動を考えておくことで、実行の段階では「行動リスト」から具体的な行動を選んで達成していくことだけに気持ちを集中することができます。
達成することだけに集中できることで、あなたの行動力は格段に高まり、仕事の効率性が大きく向上します。
「仕事をどんどんこなせる」ようになることが、自分への自信にもつながっていきます。
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